下肢静脈瘤の原因は?年齢よりも遺伝や環境が原因…静脈の逆流によって起こる!

      2018/12/22

私たちの健康的な生活を脅かす下肢静脈瘤は、さまざまな要因により引き起こされます。
下肢静脈瘤がなぜできてしまうのか、ここではそのしくみ(病態)と原因について、わかりやすく解説していきたいと思います。下肢静脈瘤が発生する理由としくみがわかると、なぜ下肢静脈瘤になりやすい人がいるのかもご理解いただけるでしょう。

下肢静脈瘤はこうしてできる

下肢静脈瘤とは、下肢(下半身)の静脈が瘤(コブ)のようになってしまう病気をいいます。見た目にはコブがない場合もありますが、静脈に変化は起きており、むくみやだるさ、湿疹や皮膚の変色などを主な症状とする場合もあります。

「コブ」というと腫瘍を連想してしまい、静脈の癌(ガン)のようなものと捉える方もいますが、静脈瘤はガンでも腫瘍でもありません。血液を循環させるという、静脈としての本来の働きが果たせなくなった結果、ふくらんでコブのようになってしまうというのが、静脈瘤の正体なのです。

静脈の働きが悪くなる(=静脈瘤ができやすくなる)原因は、立ち仕事など普段の生活に関することから、体質や遺伝までさまざまな要因が考えられますが、これらについて説明する前に、下肢静脈瘤の正体ともいうべき、コブができる原因について解説します。

先に知っていてほしいこと

まず先に、コブができてしまう「静脈」について簡単に説明しましょう。
血管には「動脈」と「静脈」、そして「毛細血管」の3つがあります。

心臓をポンプとして、血液が酸素や栄養を運ぶための通り道である動脈。
動脈を流れる血液を身体の末端まで送り届け、細胞に酸素と栄養を与えて老廃物を回収する毛細血管。
そして、老廃物を回収した静脈血、いわゆる「汚れた血液」を心臓に送り戻す静脈の3つです。

動脈はその名の通り、ポンプとなる心臓の鼓動でドクンドクンと1分間に3~5リットルもの血液を送り出します。
一方で、静脈には血液を心臓に戻すためのポンプとなる臓器はありません。頭部など、心臓より高い位置に流れていった血液は、重力により自然と心臓に戻ってきますが、下半身の血液は重力に逆らって心臓に戻る必要があります。

はたして人体はどのような方法で、重力に逆らって血液を心臓に戻しているのでしょうか。

静脈がもつ2つのしくみ

静脈は、下半身の静脈血を重力に逆らって心臓に戻すための2つの機能をもっています。


  1. ふくらはぎの筋肉を使った「ポンプ作用」
  2. 血液の逆流を止めるための「弁作用」

1.ふくらはぎの筋肉を使った「ポンプ作用」

ふくらはぎは、実は「第二の心臓」とも呼ばれる器官です。
階段を上り下りしたり、力を入れたりすると、筋肉が肥大することがわかると思います。子の肥大した筋肉が静脈を押しつぶし、たまっていた血液を上へ送り出すのです。
筋肉の収縮がポンプの役割となり、血液を上から下へ戻していく、これが静脈のポンプ作用であり、ふくらはぎが第二の心臓と呼ばれる所以です。

2.血液の逆流を止めるための「弁作用」

弁作用とは、工学分野などで使用される「逆流させないためのしくみ」のこと。

ふくらはぎのポンプ作用で血液を上に送っても、静脈がただの管であったなら、血液は重力によって下に引き戻されてしまいます。

そうならないように、静脈の血管内には「静脈弁(逆流防止弁とも)」が存在し、血液の逆流を防ぐしくみをもっています。
静脈弁は「ハ」の字のような形をしており、血液が下から上には流れても、上から下には流れない一方通行の構造となっています。

下肢静脈瘤になってしまう原因

静脈の逆流
冒頭で説明した「静脈の働きが悪くなる」というのは、この静脈がもつ2つのしくみのうち、逆流を防ぐ静脈弁が壊れて機能しなくなってしまい、血液が上から下へと逆流してしまっている状態を指します。
汚れた血液がうまく心臓に戻らず、血管に溜まってコブ上に膨らんでしまうことが下肢静脈瘤の原因です。
静脈瘤ができるまでをまとめると、下記のようになります。


  1. 静脈の逆流を防止する弁が壊れる
  2. 本来心臓に戻るべき血液が逆流する
  3. 逆流した血液が溜まり静脈がふくらむ
  4. ふくらんだ静脈がコブのようになってしまう

下肢静脈瘤になりやすい人とは

下肢静脈瘤には、なりやすい人とそうでない人がいます。では、どんな人が静脈瘤引き起こしやすいのでしょうか?
はっきりとわかっている原因は、以下の4つです。

  1. 遺伝
  2. 妊娠と出産
  3. 加齢
  4. 立ち仕事

このなかでもっとも大きいとされる原因は、遺伝的なもの(つまり体質)とされています。
元も子もない言い方にはなってしまいますが、残念ながら生まれた時点で下肢静脈瘤になりやすいかどうかはほぼ決まっています。
この主な4つの原因と、そのほかの原因となりえるものについて、順を追って説明していきます。

原因①「遺伝」

遺伝
下肢静脈瘤は非常に遺伝性が高い病気です。

父母のどちらかが下肢静脈瘤を患っている場合は40%、ふたりとも患っている場合に至っては約80%の子が将来的に下肢静脈瘤を発症するとされています。「自分の両親は大丈夫」と思っていても、下肢静脈瘤であることを黙っているケースもあれば、症状はあれどその原因が静脈瘤であることに気づいていないケースもあります。思い当たる節がない場合でも、一度両親に確認を取ったほうがよいかもしれません。

もし両親に静脈瘤があることがわかれば、日ごろから足の状態をチェックして、むくみやだるさなどの症状が出れば早めに専門クリニックに受診することをおすすめします。

原因②「妊娠と出産」

妊娠出産
女性は妊娠・出産をきっかけに、下肢静脈瘤を発症しやすくなる傾向にあります。

理由には、妊娠時は女性ホルモンの影響で血管が広がりやすくなること、胎児が静脈を圧迫し、血液が心臓に戻りにくくなることがあります。
大抵の場合は出産後に自然に改善していきますが、1~2割の方はむくみや血管のふくらみが残ってしまうようです。当然、出産回数が増えるほど産後に症状が残ってしまうケースは多くなります。

原因③「加齢」

加齢
下肢静脈瘤は、年齢が高くなるにつれて発症しやすくなります。

下肢静脈瘤を聞くとご年配の方がかかりやすいイメージがあるかもしれませんが、30歳以上の方の二人に一人が静脈瘤を患っている可能性があるのです。
日ごろから鍛えていれば別ですが、通常は一定の年齢を超えると筋肉量が減り、ふくらはぎの筋肉も衰えてポンプ作用が機能しにくくなってしまいます。加齢により静脈弁も壊れやすくなってしまうことも原因です。

データ上は30代から一気に患者数が増えていますが、20代後半でも「診察してみたら下肢静脈瘤だった」というケースも多いようです。

原因④「立ち仕事」

1日のうち8時間以上たち続けている人に下肢静脈瘤は発生しやすいというデータがあります。

長時間立ちっぱなしでいることは、血液は常に重力の力を受けているということになります。すると、逆流を防止する静脈弁に過度な負担がかかり、ついには緩んで戻らなくなってしまいます。

なお、同じ立ち仕事でも、適度に動いたり歩き回ったりする仕事の場合はふくらはぎのポンプ作用が働くため、静脈瘤が発生する可能性は低くなります。

  • 立ち仕事の例
  • 警備員
  • 美容師・理容師
  • 調理師(板前)
  • レジ店員
  • 教師
  • 工場現場などの作業員

その他の原因

女性

下肢静脈瘤は、男性よりも女性の方がなりやすい傾向にあります。

妊娠・出産を経験する方が多いということもありますが、そもそも男性と比べて軟部組織(身体を構成しているやわらかい部分)がデリケートなため、静脈弁が壊れやすいという理由もあります。

また、足のむくみやだるさに機敏であること、美容の面でも静脈瘤の改善を求める方が多いため、男性と比べて病院に行く割合が高く、静脈瘤患者として集計されやすいことも理由のひとつです。

運動不足・肥満

運動不足だと、足の静脈の流れは悪くなりがちです。

理由はごく単純で、運動不足で筋力が衰えることは、ふくらはぎのポンプ作用も衰えてしまうということです。

肥満が直接的に下肢静脈瘤になりやすいかというのは今でも賛否両論がありますが、過度の肥満の場合は静脈瘤になりやすいというのが定説です。

下肢静脈瘤の原因‐よくある質問集‐

Q.喫煙は下肢静脈瘤と関係ありますか?

A.
喫煙は下肢静脈瘤に直接的な関係はありません。
しかし、喫煙により血管が固くなってしまい、静脈弁が壊れても血管がふくらみにくいことから、診断が遅れて重症化する可能性が高いというリスクがあります。
なお、どちらかというと喫煙は動脈硬化など、静脈より動脈の問題を引き起こしやすいので注意が必要です。

Q.血管が赤紫色に変色し、網目状になっています。コブのようなものはありませんが、下肢静脈瘤でしょうか?

A.
下肢静脈瘤は、静脈がコブ状にふくらむ「伏在型静脈瘤」と、それ以外の「軽傷静脈瘤」に分類されます。
軽症静脈瘤は伏在型静脈瘤のようなコブ状には進行せず。皮膚に近い位置にある細い静脈がふくらんで、青白く、または赤紫色などに見える静脈瘤です。
網目状で赤紫色に変色しているのであれば、この軽症静脈瘤を引き起こしている可能性がありますので、専門医療機関での検査が必要と思われます。

Q.下肢静脈瘤を疑っています。治療には手術を行うしかないのでしょうか?

A.
下肢静脈瘤の治療方法には、弾性ストッキングによる圧迫療法、硬化剤を注入する効果療法といった対処療法(症状を改善するための治療)と、カテーテルによる血管内治療、静脈を引き抜くストリッピング手術などの原因療法(根本的な治療)があります。
症状の度合いとご希望により、提供する治療方法にはいくつかの選択肢があります。詳しくは下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の主な5つの治療法をご参照ください。

Q.高脂血症(こうしけっしょう)と診断されました。下肢静脈瘤と関係する病気ですか?

A.
高脂血症は脂質異常症とも呼ばれ、血中の脂肪の濃度が高くなって血液がドロドロになってしまう病気です。
ドロドロの血液そのものは下肢静脈瘤発症のリスクとはなりませんが、すでに静脈瘤を発症していた場合、コブ状に広がった静脈内で血栓(血の塊)が発生しやすいというリスクがあります。

 - 下肢静脈瘤