なかなか治療してもらえない下肢静脈瘤

   

院長の安本です。

当院は、2016年7月1日に開業して以来、たくさんの患者さんに来院して頂いています。

「いつから静脈瘤があるのですか?」と尋ねると、10年、20年熟成させてきたという患者さんがたくさんいます。巨大化した血管がボコボコにウネウネしていたり、色素沈着がひどかったり、浮腫がひどく象の足の様になってしまっている方も少なくありません。

そのような患者さんに、「なぜ今まで治療してこなかったのですか?」と尋ねると、回答は概ね4つのパターンに分かれます。

①病気だと思っていなかった。治ると思っていなかった。歳だから仕方ないと思っていた。

②病気だと思っていたが、何科に行ったら良いかわからなかった。

③医師(心臓血管外科以外)に診てもらったが、大丈夫と言われた。

④医師(心臓血管外科)に診てもらったが、大丈夫と言われた。

①、②に関しては患者さんの情報不足、③、④に関しては医療者側の問題があります。

下肢静脈瘤は放っておいても命に関わる病気ではありません。
しかし、進行すると「足がむくむ」、「足がだるい」、「寝ていると足がつって目が覚める」、「足がかゆい」、「足が痛い」、「足が赤くなって腫れる」などの症状が出てきます。
特に高齢者の場合、このような症状があると外出が困難になり、ADLQOLが著しく損なわれることも少なくありません。長年つらい症状に悩みながら、歳のせいだと諦めて、治る病気だと認識していない患者さんが実はたくさんいらっしゃいます。
o0304040713702159705
上の写真くらい足がむくんでいると、足に重りをつけて生活しているようなものです。治療すると、血管のボコボコはキレイに治りますし、「むくみ」、「足のだるさ」などの症状はなくなります。ただ、治療しても写真のようにくるぶし付近に付いてしまった色は、基本的にこのままです。

o0480064013702159481

色素沈着と潰瘍

下肢静脈瘤は、上記のような症状や、血管のボコボコ以外に、進行すると「色素沈着」や「難治性潰瘍」という症状も出てきます。 治療すれば「潰瘍」は治癒しますが、傷跡は残ります。「色素沈着」は治療しても基本的に消えません。進行してからでも治る症状と治らない症状があるのです。

実は、下肢静脈瘤は医学的には血管のボコボコが問題なのではなく、症状とその進行が問題なのです。しかし、このような情報は多くの患者さんも心臓血管外科以外の先生も知らないことが多いです。
下肢静脈瘤を疑ったら、最低でも血管超音波検査を行うか、できなければできる病院に紹介するべきなのですが、実際には「大丈夫です」と片付けられてしまうことが多いのが実情です。
せっかく受診したのに、検査や治療の機会を与えられることなく帰宅する患者さんはとても多いです。

また、下肢静脈瘤は血管外科や心臓血管外科が専門ですが、それらの診療科を標榜して開業されている先生はほとんどいませんし、基本的に大病院にしかありません。
そして、それらの病院は基本的に紹介された患者さんのみを受け入れいているので、他科で「大丈夫」と言われてしまうと受診する機会はありません。 血管外科や心臓血管外科に紹介された場合でも、彼らは非常に忙しく、心臓や動脈疾患を主に扱っていて、正直なところ静脈瘤まで手が回らないのが実情です。どうしても生命にかかわる、緊急性のある疾患に診療の重点が置かれてしまうのです。
これは、現在の医療システムでは致し方ないことだと思います。そのため、大抵の大病院では、下肢静脈瘤手術は週に1回、1-2人の患者さんを治療しています。もちろん、手術予約は半年〜1年先まで埋まっています。
このような状況なので、下肢静脈瘤があって、つらい症状に悩んでいても「まだ大丈夫、様子をみましょう」と言われて帰されてしまうのです。

下肢静脈瘤がある患者さんの場合、血管超音波検査を行って、静脈に逆流があるかチェックします。静脈学会のガイドラインに従えば、基本的に逆流があって症状がある患者さんは手術適応となります。医師は治療した場合と治療しない場合のメリットとデメリットについてお話しして、治療を希望するかどうか、治療しなくても「大丈夫」かどうかを患者さん本人に決めてもらうべきなのです。
これは、下肢静脈瘤診療に限らず、すべての疾患の診療に対して行われている現代医療の共通の考え方です。
医療者側の都合で、患者さんの治療の機会を奪ってはいけないのです。
今まで、つらい症状を抱えながら、治療の機会がなかった患者さんを1人でも多く救いたいと思い、下肢静脈瘤治療専門のクリニックを開業致しました。
今まで病気だと気づかなかった患者さん、今まで治療してもらえなかった患者さんのために、今後も積極的に情報発信していきたいと思います。

 -